平均寿命はどんどん延び、介護は誰にもやってくる時代。しっかりものの母親が突如不思議な行動がみられるようになった経験をもとに、「おかしいぞ?」と思ったときの対応についてお伝えします。
【目次】
- 結論!! 「あれ? なんかおかしいぞ」と思ったら即受診を
- 認知症の初期に見られる行動、言動
- 診断が付いたら、認知症の進行をゆるやかにする生活を考える
- サービスを利用するためには、まずは介護認定を受ける
- デイサービスのありがたさ
- まとめ
私の母は2年前から物忘れが目立つようになり、認知症と診断されました。
今まで全力で家事をしてくれていた母に甘え、私は仕事に重きを置いていましたが、
母が認知症になったことで、当たり前の家事がどんっとのしかかってきました。
50代から家事と仕事、そして介護・・・私にとってはかなりハードであり、時短勤務に切り替え
なんとか看護師を続けています。
誰にも訪れるであろう介護の時。できるだけ遅らせたいし、親には元気でいてほしいですよね。特に認知症は本人、家族にとって大変つらい体験です。
「なんか最近、言っていることが変だなぁ・・」と少しでも思ったら、それは認知症の大切なサインかもしれません。
実母の体験をもとに、認知症の早期発見、診断後の対応についてまとめてみました。
結論!! 「あれ?なんかおかしいぞ」と思ったら即受診を
ある程度高齢になったら、認知機能の低下は避けられません。しかしその程度が許容範囲なのかどうか。おかしいかもと思ったら、まずは認知機能検査のために物忘れ外来や精神科にいきましょう。「おかしいかも」の断定的な段階で十分受診可能です。
精神科というと抵抗がある方も多いかと思います。そんな時は、「頭の健康診断にいってみよう〜」と促すと、意外とすんなり引き受けてくれます。これは私が精神保健科外来で、臨床心理士さんから習ったテクニックです。
ご家族から相談を受けた際にも、高確率でスムーズな受診に導くことができた必勝(?)ワードです。
認知症の初期にみられる行動、言動
私の母の「おかしいかも」と思った初期行動には、以下のものがありました。
✅ゴミを出す日(ゴミの種類)を間違えることが多くなった。
✅同じことを何回も聞く。(多少は誰でもあることですが、10分もしないうちに聞くなどは怪しいです)
✅ぼーっとしていることが多い。今まで興味がなかったテレビ番組を見ている。理解はしていない。(例えばルールもわからないけど野球中継を見ているとか)
✅無表情なことが多くなった。
✅家事等の段取りができなくなる、献立を考えられなくなる、または時間がかかる。
✅約束を忘れる。カレンダーに書いていても忘れる。
✅薬の管理ができなくなる。薬を飲まずにそのまま捨てている。
✅定位置に物を片付けられなくなる。くつしたとズボンが一緒にしまわれているなど。
✅話を合わせてその場をごまかす。(取り繕い反応といいます)
これらの症状がみられ、本人も物忘れがひどくなったと自覚していました。私はすぐに、精神科の外来に連れていきました。
診断がついたら、認知症の進行を「ゆるやか」にする生活を考える
病院では、まず詳細な問診を本人と家族の両方に行います。生育歴やいつから、どんな気になる症状があるのかを具体的に確認されます。物忘れのテスト(「長谷川式簡易知能評価スケール」「MMSE」)CTやMRI検査などを行います。
その結果、認知症となれば薬を処方され、経過をみながら薬の量を調整していくことになります。また、認知症の進行をゆるやかにし、介護の負担を軽減するためにデイサービス(通所介護)の提案などもしてくれます。母の場合は、記憶に関する点数が低く、頭部MRIでも記憶の領域に所見が認められました。そのため認知症の初期段階と診断され、薬が処方されました。
私はすぐに、デイサービスを受けようと心に決め、病院の帰りに区役所に行きました。
サービスを利用するためには、まずは介護認定を受ける
日本国民は介護保険制度を利用するために、介護保険料を40歳からおさめています。これを利用しない手はありません。
サービスを利用するためには、要介護認定を受ける必要があります。
要支援と要介護の比較表
介護度 | 自立度の状態 | 具体的な支援内容 | 利用できるサービス |
---|---|---|---|
要支援1 | 基本的に自立しているが、家事などの支援が必要 | 食事や排泄は自分でできるが、掃除ができない | 介護予防サービス |
要支援2 | 自立度がやや低下し、より多くの支援が必要 | 入浴時に背中を洗えないなど、部分的な介助が必要 | 介護予防サービス |
要介護1 | 日常生活の一部に介助が必要 | 排せつや入浴時に介助が必要 | 介護サービス |
要介護2 | 日常生活全般に部分的な介助が必要 | 立ち上がりや歩行が不安定 | 介護サービス |
要介護3 | 日常生活全般に全介助が必要 | 排せつ、入浴、着替えに全て介助が必要 | 介護サービス |
要介護4 | 自立した生活がほとんどできない | 食事や入浴など全てに介助が必要 | 介護サービス |
要介護5 | 完全に介護が必要な状態 | 寝たきりで全ての動作に介助が必要 | 介護サービス |
介護認定の流れは以下の通りです。
1️⃣市町村役場で要介護認定の申請を行う
後日、介護認定調査員が調査にきます。
認定調査では、簡単な質問、物忘れの程度や身体の動きの確認、日常生活動作(家事はできるか?買い物に行けるか?、薬の管理はできるかなど)について本人と家族に聞き取りがあります。認知症の薬が開始になっていると、ほとんど要介護1以上になります。
はりきって、「なんでもできますよ!」と質問に応えてしまう方もいますが、ここはありのままの普段の様子を伝えることが大事です。なぜなら、できることが多いと、軽い認定になってしまうからです。
本人の言っていることが家族から見て違う場合は、きちんと調査員へ説明しましょう。
2️⃣介護保険被保険証の交付
介護認定の判定後、介護保険被保険証が自宅に郵送されてきます。混んでいると1ヶ月程度かかります。
3️⃣ケアマネージャーの決定
地域包括支援センターや福祉課に相談し事業所を紹介してもらいます。最初に区役所に行った際に、それらの流れが書かれているパンフレットをもらえます。その後、ケアマネージャーが自宅に来てくれて、サービスを紹介してくれます。
私は、近所の地域包括支援センターに相談して事業所を決めました。
4️⃣見学を行い利用するサービスを選ぶ
本人にサービスを見学、体験してもらいます。サービス内容があわないなと思ったら、ケアマネージャーに相談し他の施設の体験も可能です。
5️⃣サービス担当者会議
サービスを決定したら担当者会議があります。ケアマネージャー、利用するサービスの担当者、サービスを受ける本人、家族(主となる介護者)でサービスに期待することなどを話し合い契約します。
やっとサービス開始!! なかなか長い道のりです。要介護認定が決定するまで1ヶ月、サービス開始まで1ヶ月、トータル2ヶ月かかりました。
また、これらの手続きのために、何度か仕事も休む必要がありました。今後も病院の付き添いなどで急な休みが必要になる可能性も高く、早いうちから職場には「介護が始まった」ということをしっかり伝え理解を得ておきました。
デイサービスのありがたさ
見学をして決めたものの、デイサービスに通い始めてから合わないと感じる人もいます。はじめは知らない人に会うことに緊張したり、慣れない環境で疲れ、「行きたくない」と言う人も多いです。母も最初は「楽しくない」とか「自分は元気だけど、みんな動けない人ばかりで病気になりそう。すぐやめたい」と言い出していました。特に母は、もともと自身が介護の仕事をしていたこともあり、自分が人の世話になることは耐えられなかったようです。しかも、問題点は物忘れなだけで体は元気なため、なぜこのようなところに通わなければいけないのか?と疑問に思ってもいたようです。
しかし、デイサービスの職員さんはその道のプロです!! 上手に母との関係性を構築し、母が好きなこと、得意なことをみつけてくれ、自尊心が高められるように接してくださいました。
お風呂に入り、運動リハビリも行ってくれ、美味しい昼ご飯が出て、送迎付きというありがたいサービスです。
今ではすっかり慣れ、デイサービスで色々な人と接することで認知機能低下の進行を遅らせることに役立っています。
またデイサービスを利用することで、家族は介護から解放され、自身の時間を持つことができます。私にとっても、気分転換になり大切な時間となっています。
まとめ
残念ながら認知症は治癒しない病気です。しかし、早期発見で進行を遅らせることができます。
◯「おかしいかも」と思ったら、よく行動を観察すること
◯早めの受診をすること(早すぎるということはないと断言できます!)
◯介護保険によるサービスを利用すること
◯職場にしっかり伝え、急な休みがあることも理解してもらうこと
家族のサインに気づいたら、早めの受診と介護保険によるサービスの利用を積極的に行いましょう!!
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