看護管理職が頑張るほど苦しくなった理由③|慢性期病院で見えた組織の限界

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急性期病院での出来事を経て、私は慢性期病院へ異動することになりました。
環境が変われば、もう一度やり直せるかもしれない。
そんな思いを抱きながら、新しい病棟での勤務が始まりました。

「看護管理職が頑張るほど苦しくなった理由」シリーズ

このシリーズでは、看護管理職として働く中で感じた葛藤や気づきを、実体験をもとに書いています。

目次

慢性期病院への異動

新しい職場の朝。慢性期病院への異動

慢性期で出会ったスタッフたちは穏やかで、患者さんに誠実に向き合う人たちでした。
私はそのスタッフたちと一緒に、もう一度病棟を整えていこうと必死に踏ん張っていました。

しかし働き続けるうちに、ある違和感が少しずつ大きくなっていきました。

それは、この組織の中で人が育っていく仕組みが十分に機能していないのではないかという感覚でした。

看護部の関与の少なさに感じた違和感

誰もいない会議室。組織との距離

働き始めてしばらくすると、もう一つの違和感を抱くようになりました。

それは、看護部の関与の少なさです。

病棟運営は基本的に師長に任されており、部長や副部長が現場の状況に深く関わる場面はほとんどありませんでした。

あるとき、副部長の言葉の中に
「師長が育たないのは、師長自身の問題だ」
というニュアンスを感じる場面がありました。

もちろん、管理職としての責任はあります。
しかし私は、管理職が成長していくためには、看護部としての関与や支援が不可欠なのではないかと感じていました。

急性期病院で働いていた頃、私は部長や副部長の存在を身近に感じていました。

困ったときには相談できる。
必要なときには指摘してもらえる。
ときには厳しく、しかし現場を見ながら関わってくれる。

そうした関与があることで、管理職として支えられていると感じる場面が何度もありました。

だからこそ、慢性期病院で感じた「現場任せ」の空気には、強い違和感を覚えたのだと思います。

成長できない組織ではないかという感覚

慢性期で働くうちに、もう一つ強く感じるようになったことがありました。

それは、
「この組織にいては、自分もスタッフも成長できないのではないか」
という感覚でした。

部署によって看護の質には大きな差があり、病棟によってはスタッフが同じケアを繰り返しているだけのように見える場面もありました。

看護計画が立てられていても、それが日々のケアに十分活かされているとは言い難い状況。

慢性期病院では、高度な医療行為は少ない分、日常のケアには多くの時間が必要です。
スタッフは目の前の業務に追われ、患者さんの意向に沿った看護を考える余裕はほとんどありませんでした。

もちろん、その中でも「もっと良いケアを考えたい」と悩んでいるスタッフもいましたが、そうした思いを持つ人が多いとは言えない状況でした。

コロナ禍の中で踏ん張った日々

実は、異動してすぐの頃から「ここで働き続けるのは難しいかもしれない」
という思いが、頭のどこかにありました。

しかし異動直後にコロナ禍となり、病院全体がこれまで経験したことのない不安、緊張、未知のウイルスへの恐怖の中での緊急対応に追われます。

自分の将来や、この組織で働き続けるかどうかを考える余裕など、ほとんどありませんでした。

そんな状況の中でも、病棟のスタッフはよく協力してくれていました。

看護師やリハビリスタッフが連携して関わったことで、患者さんの状態が良くなっていった事例もあり、

「このチームで関われてよかった」そう思える瞬間が確かにあったのです。

あのとき感じた看護への誇りがあったからこそ、私はこの病棟で踏ん張り続けることができたのだと思います。

自分の病棟は好きだった

慢性期病棟のデイルーム。患者さんと過ごした温かい時間

慢性期病院で働く中で、私はスタッフ一人ひとりと向き合うことを大切にしてきました。それは、急性期でできなかった向き合い方の実践でした。

話を聞きながら病棟の雰囲気を整え、チームとして患者さんに向き合うことを意識するーー

その結果、患者さんやご家族から感謝の言葉をいただきスタッフも看護の喜びを感じていました。

私は、自分の病棟が好きでした。

しかしその一方で、組織全体を見たときには違和感が残り続けていました。

問題が先送りされる組織の構図

あるとき、他の病棟で患者対応に問題があったスタッフが、特に大きな指導もないまま私の病棟へ異動してきました。

そのスタッフの影響で、病棟の雰囲気が大きく揺れはじめました。

私は何度も面談を行い、最終的には部長面談までに至りました。
結果として、そのスタッフは退職になったのですが、私の中には疑問が残りました。

「前の病棟では、どのような管理が行われていたのだろうか」

その後も、管理が難しいスタッフや対応に困るスタッフが私の病棟へ異動してくるケースが続きました。

もちろん、スタッフと向き合うことは管理職として大切な仕事です。

しかし同時に、
これは個々の病棟だけで解決すべき問題なのだろうか
という疑問が大きくなっていきました。

慢性的な人材不足が生んでいた構図

病院では、慢性的な人材不足が続いていました。

現場の管理者として感じていたのは、
「今このタイミングで辞められると病棟運営が成り立たなくなる」
という空気。

そのため、課題を深く振り返るような厳しい面談は、あまり行われていないように感じることもありました。

ーーその結果、本来向き合うべき問題が残ったままとなり、真面目に働いているスタッフが負担を抱える状況が生まれてしまう。

現場では「とりあえず異動させる」という形で問題が処理されているように見える場面もありました。

問題が解決されないまま、別の部署へ移動していく構図が生まれているように感じられたのです。

この組織で働く未来が見えなくなった

もちろん、すべてがそうだったわけではありません。

しかし、前向きではない異動が続いたことで、私は次第に確信するようになっていきました。

この組織の中で、看護を育てていく未来を、自分は描けないかもしれない

その思いは、静かに、しかし確実に大きくなっていきました。

そしてこの確信が、私にある決断を考えさせることになります。

それが、
「退職」という選択でした。

この話を、こんな方に届けたい

組織の中で働く看護管理職として、こう感じている方へ——

  • 自分の部署だけ守っていても、組織全体は変わらない気がする
  • 看護部の関与が薄く、相談できる場所がない
  • この組織で働き続ける未来が、見えなくなっている

そのとき、私が実際に考えた3つの選択肢をお伝えします。

① 組織を変えるために、もう一歩踏み込む

問題提起を続け、看護部を巻き込む。師長会議で声を上げる、現場ラウンドを依頼する、他部署の管理職と連携する——できることは残っています。ただし、組織は簡単には変わらないこともあると覚悟することも必要です。

② 自分の病棟だけを、全力で守り続ける

組織全体への期待を下げて、目の前のチームに集中する。それも一つの正解です。「自分の病棟は好きだった」——私にとってもこの感覚は、最後まで支えになっていました。

③ 組織を離れる選択を、考え始める

看護師という資格は、一つの病院に縛られるものではありません。30年以上の現場経験は、病院の外でも活きる力になります。第4話で詳しく書きますが、私も最終的にこの選択を取りました。

「看護の経験は、病院の外でも活きる」——そう気づかせてくれた視点は、こちらの記事にまとめました。

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この記事を書いた人

北海道の小さな庭で宿根草を育てながら、ガーデニングの記録をブログに書いています。
寒冷地でも育つ植物や、実際に育てて分かった育て方などを紹介しています。

本業は看護師で、これまで30年以上医療の現場で働いてきました。
看護や働き方、認知症介護について感じたことも、ときどきこのブログで書いています。

庭づくりとガーデニングは30年以上続けている趣味。
北海道でも育てやすい植物や、寒冷地ならではの庭づくりの楽しさをお伝えできたらうれしいです。

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