「師長、ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
ナースステーションの片隅や、廊下で不意にかけられるこの言葉。 皆さんは今、どんな気持ちで受け止めていますか?
「お、いいよ!何かな?」と笑顔で返せる時もあれば、忙しすぎて「え、今……?」と心の中で冷や汗をかいてしまう時もありますよね。
とくに、改まって設定した「定期面談」の場。 相手がベテラン看護師さんだったり、何を考えているか掴みづらい若手ナースだったりすると、なおさらエネルギーを使います。
「何か悩みはある?」
「いえ、別にありません」
「……(沈黙)……そっか、ならいいんだけど……」
こんな「形だけの面談」で終わってしまうのは、組織やお互いにとっても本当にもったいないことなんです!
実は、スタッフの本音を8割引き出すには、ちょっとした「聴き方のコツ」と「心の置き所」があるんです。 30年現場を歩んできた私が、数々の失敗から学んだスタッフの心がスッと軽くなる面談術を、今日は余すところなくお伝えしますね。
なぜ、面談で本音を引き出す必要があるのか?
そもそも、忙しい業務の合間を縫ってまで、なぜ本音を聴く必要があるのでしょうか。
それは、「離職のサイン」や「現場の歪み」を早期発見するためです。 スタッフの言葉の裏にある不満や不安をキャッチできれば、大きなトラブルになる前に対処できます。
また、本音で話せる関係性は「この師長は私を見てくれている」という信頼感(心理的安全性)に繋がり、結果としてチーム全体のパフォーマンスが向上します。面談は、ただの事務作業ではなく「最高のチームを作るための投資」なのです。
問題が深刻化する前に対応することで、彼女たちの個性や強みを理解し、適切な役割分担やキャリアプランの提案に繋げることも可能です。
[聴き方編]本音を引き出す最強の武器「傾聴力」
「聴く」ことは、単に耳を傾けることではありません。相手に「受け入れられている」と感じてもらう技術です。
「技術」ということは、つまり「練習すれば、誰でも身につけられる」ということ。決して、もともとの性格やセンスの問題ではありません。自転車の乗り方を覚えるのと同じで、コツを知って、少しずつ意識して繰り返せば、必ず自分の「一生モノの武器」になります。
はるゆ大丈夫!技術だから練習すれば必ず出来るようになりますよ
① 相手のペースに合わせる「ペーシング」
早口のスタッフには少しテンポを上げ、ゆっくり話す人には落ち着いたトーンで。相手の呼吸に合わせるだけで、心の壁は驚くほど低くなります。
② 魔法の技術「オウム返し」と「感情の確認」
相手の言葉をそのまま繰り返す。これだけで「理解していますよ」というメッセージになります。
【私の実体験:言葉を繰り返すだけで、心はこんなに動く】
以前、あるスタッフとの面談で、彼女がポツリとこう漏らしたことがありました。
スタッフ:「勇気を出して伝えたのに、『それはこういうことでしょ!』と決めつけられてしまって……」
過去の苦い経験を打ち明けてくれた彼女に、私はこう返しました。
私:「決めつけられて、がっかりしてしまったんですね?」
すると、それまで少しうつむき加減だった彼女が、「そう、そうなんです!」と身を乗り出して、それまで以上にたくさんの想いを言葉にしてくれたのです。
私はただ、彼女の「がっかりした」という感情を繰り返しただけ。たったこれだけで、彼女は「この人は私の味方だ」と確信してくれたのです。
③ 「沈黙」をギフトとして受け取る
面談中の沈黙は、相手が自分の心を探っている「大切な時間」です。 焦って次の質問を投げず、心の中で5秒数えて待ってみてください。その沈黙の後にポロッとこぼれる言葉こそ、彼女たちの「本音」です。
[話し方編]「伝える」ではなく「引き出す」話し方の極意
「聴き方」で土台を作ったら、次は「話し方」でスタッフの思考を動かしていきましょう。ここでのゴールは、師長が正論を伝えることではなく、スタッフ自身の口から答えが出てくるようにナビゲートすることです。
①「オープンクエスチョン」で扉を開く
「はい・いいえ」で答えられる質問は、会話を終わらせてしまいます。具体的な情景を思い浮かべてもらう質問を投げかけましょう。
- 「最近、一番『看護師やっててよかったな』って感じた瞬間はあった?」
- 「今の業務の中で、『これがもっとスムーズにいけばいいのに』って思うこと、何かある?」
- 「今の100点満点でいうと、自分のコンディションは何点くらいかな?
②「アドバイス」を横に置いて「質問」に徹する
管理職は経験豊富な分、スタッフの話を聞くとすぐに「それはね、こうすればいいんだよ」と解決策を提示したくなります。でも、本音を引き出したいなら、アドバイスは最後まで取っておきましょう。
- NG:「それはあなたの確認不足が原因じゃない?」
- OK:「その時、本当はどうしたかったかな?」
まずは相手の中に答えを探しにいく。この姿勢が「詰められている」という恐怖心を、「一緒に考えてくれている」という安心感に変えます。
③「Why(なぜ?)」を「What(何が?)」に変換する
「なぜ、あんなミスをしたの?」という「Why」の質問は、相手を追い詰め、言い訳を引き出しやすくしてしまいます。本音を聴きたい時は「What」を使って、事実や感情に焦点を当ててみてください。
- 「なぜできなかったの?」 → 「何が、スムーズな進行を妨げちゃったかな?」
- 「なぜ相談してくれなかったの?」 → 「相談しにくいと感じたポイントは、具体的に何だった?」
こう話しかけることで、スタッフは「責められている」と感じることなく、客観的に状況を話せるようになります。
④ 語尾を優しく「〜かな?」「〜だね」で整える
言葉の内容と同じくらい大事なのが、語尾のニュアンスです。断定的な言い方を避け、少し余白を持たせることで、スタッフが言葉を差し込みやすくなります。
「こうしなさい」と指示するのではなく、「〇〇さんはどう思うかな?」と語尾を上げるだけで、対等な対話のスペースが生まれます。
共感力こそが、最強のマネジメント
私はかつて、スタッフに敬語を徹底できず、ついフレンドリーになりすぎる自分を「管理職として甘いのではないか」と悩んだ時期もありました。
しかし、今の現場で求められているのは「威厳」よりも「安心感」です。 基本は丁寧な言葉で敬意を払いつつ、相手が辛い時には「それは大変だったね」と一緒に心を寄せる。この「心の距離の近さ」こそが、管理職に必要な本当の共感力だと、今は自信を持って言えます。
まとめ | 面談は「愛」と「磨ける技術」でできている
最後にお伝えしたいのは、これらはすべて「後から身につけられる技術」だということです。 「私は話すのが苦手だから」「共感するのが下手だから」と諦める必要はありません。今日ご紹介したオープンクエスチョンやオウム返しは、意識して練習すれば誰でも必ず上達します。
もちろん、最初から完璧にできなくても大丈夫。 たとえ言葉がたどたどしくても、「あなたのことをもっと知りたい」「あなたの力になりたい」という純粋な想いがあれば、それは必ずスタッフに伝わります。
面談は、スタッフを評価し、正す場ではありません。 「私はあなたの味方だよ」という愛を、磨いた技術に乗せて届ける大切な時間です。
明日からの面談では、少しだけ肩の力を抜いてみてください。 「今日はこの人の、どんな素敵な本音に出会えるかな?」 そんなワクワクした気持ちで向き合えば、きっと今まで以上に、スタッフの笑顔と本音があふれる職場になっていくはずですよ。
あなたの挑戦を、心から応援しています!
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